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取り木を使った盆栽の増やし方とコツ

取り木(とりき)は、樹木の幹や枝から根を発生させ、新しい木を作る伝統的な増殖技法です。特に盆栽の世界では、樹形を整えたいときや、気に入った木を増やしたい場合にこの方法がよく使われます。取り木を利用すると、幹や枝の一部を親木から切り離して新たに盆栽を作ることができ、比較的短期間で美しい樹形を持つ木を育てることが可能です。この記事では、取り木の基本的なやり方と成功させるためのコツを詳しく解説します。

取り木の特徴とメリット

取り木の最大のメリットは、親木の特徴をそのまま受け継ぐことができる点です。例えば、幹の太さや枝の配置、葉の形など、親木と同じ遺伝的特性を持った新しい盆栽を育てられるため、理想的な形や特徴を持つ盆栽を増やすことができます。

また、取り木を使うことで、比較的早い段階で既に成熟した幹や枝を持つ盆栽を作ることが可能です。通常の種や挿し木から育てる場合に比べ、取り木は短期間で大きな成果を得られる技法として、上級者にも人気があります。

取り木のメリットまとめ

  • 親木の特徴をそのまま引き継ぐ
  • 比較的短期間で成熟した樹形を得られる
  • 幹や枝が太く、形が整った状態で増やせる
  • 理想的な樹形を早く実現できる

取り木を使った盆栽の増やし方

取り木の基本的な手順は、親木の幹や枝の一部を環状に剥ぎ取り、その部分から新しい根を発生させて新たな木を作るというものです。以下に、具体的な手順を説明します。

1. 取り木を行う時期

取り木を行うのに適した時期は、春から初夏がベストです。この時期は樹木が成長期に入り、活発に成長するため、根が発生しやすく成功率も高まります。具体的には、4月から6月にかけてが理想的です。

2. 親木の選定と準備

まず、取り木を行う親木を選びます。理想的には、健康でしっかりと成長している木を選びましょう。幹や枝の部分がしっかりしていて、取り木後の成長が期待できるものが良いです。

次に、どの部分から取り木を行うかを決めます。一般的には、幹や枝の太さが適度にあり、盆栽としての形を作りやすい部分を選ぶと良いです。幹や枝の中でも、節があり新しい芽が出やすい部分を選ぶと成功しやすくなります。

3. 幹や枝の皮を剥ぐ

取り木を行う位置を決めたら、その部分の樹皮を剥ぎます。まず、取り木を行う部分の上下に環状の切り込みを入れ、カッターやナイフを使って樹皮を1~2cmの幅で剥ぎ取ります。剥ぎ取った部分には、カンブリア層(樹木の成長層)が残らないように注意しながら、しっかりと削り取りましょう。カンブリア層が残ると、栄養が伝わってしまい、根が出にくくなります。

4. 湿らせたミズゴケで包む

樹皮を剥いだ部分には、発根を促すための湿らせたミズゴケを使います。ミズゴケを水に浸し、しっかりと湿らせた後、軽く絞ってから剥いだ部分に厚めに包みます。ミズゴケは根の発生を助け、乾燥を防ぐ役割があります。

5. ビニールやアルミホイルで覆う

ミズゴケを巻いた後、その上からビニールやアルミホイルでしっかりと覆います。これにより、湿度を保ち、ミズゴケが乾燥しないようにすることができます。ビニールで包む際には、上下をしっかりと縛り、水が蒸発しないように密閉します。透明なビニールを使うと、根の発生状態を確認しやすいので便利です。

6. 定期的なチェック

取り木を行った後は、定期的にビニールの中の湿度をチェックし、乾燥している場合は再度水を与えます。また、2〜3週間ごとに発根の状態を確認します。新しい根がミズゴケに巻き付くように発生してくるまで、約1〜2ヶ月ほどかかります。

7. 新しい根が出たら切り離し

根が十分に成長し、しっかりとミズゴケの中に根を張ったことが確認できたら、親木から切り離します。切り離す際は、根を傷つけないように慎重に切り取ります。

切り離した後は、すぐに新しい鉢に植え付けます。鉢の底に鉢底石を入れ、水はけの良い盆栽用土を使用し、根をしっかりと土に定着させます。植え替えた後は、たっぷりと水を与えて、日陰の涼しい場所で管理しましょう。

取り木を成功させるためのコツ

取り木を成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。以下のコツを押さえることで、取り木の成功率を高めることができます。

1. 健康な親木を選ぶ

取り木は、親木の健康状態が成功に大きく影響します。病気や害虫に侵されていない、元気な木を選ぶことが重要です。健康な木であれば、発根も早く、取り木が成功しやすくなります。

2. 乾燥させない

ミズゴケが乾燥すると、発根がうまく進まないため、ビニールやアルミホイルでしっかりと湿度を保つことが大切です。また、取り木を行う場所が風通しが良すぎると乾燥しやすいため、適度な湿度を保てる環境で管理することがポイントです。

3. 適切な時期に行う

取り木は、樹木が成長している時期に行うのが最も効果的です。春から初夏にかけては、木が活発に成長しているため、発根もスムーズに進みます。逆に、休眠期に取り木を行うと、発根に時間がかかるか、失敗する可能性が高くなります。

4. 発根促進剤を使う

発根をより早く促進するために、発根促進剤を使用することも一つの方法です。樹皮を剥いだ部分に発根促進剤を塗布することで、根の成長を促進させ、成功率を上げることができます。

5. 根がしっかりと成長するまで待つ

取り木を急いで切り離すと、根が不十分な状態で植え替えを行うことになり、失敗することがあります。根が十分に成長し、ミズゴケに絡みついているのを確認してから切り離すことが重要です。通常は、2〜3ヶ月程度の期間を見込んで慎重に判断しましょう。

取り木を使った盆栽のまとめ

取り木は、親木の美しい樹形や特徴をそのまま引き継ぐことができる、効率的な盆栽の増やし方です。適切な時期に行い、湿度管理や発根の確認をしっかりと行うことで、健康で美しい新しい盆栽を作ることができます。取り木をマスターすれば、自分の好きな樹形の盆栽を増やしたり、他の木を取り木から育てる楽しみが広がります。

取り木を使って、ぜひ理想的な盆栽を育てるチャレンジをしてみてください。

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